System of Insight(SoI)その1
Sytem of Record(SoR)とSystem of Engagement(SoE)からの情報を分析することをSystem of Insight(SoI):戦略意思決定としますが、現在、社外向けのIR(Investor Relations)では、企業の実態・透明性がより強く求められており、Sytem of Record(SoR)寄りの過去の情報に基づく財務分析(財務諸表:貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)とSystem of Engagement(SoE)寄りの非財務分析(管理会計(売上予測、予算・実績差異)、LTV、KPI、OKR、ESGなど)に分けられます。
近年、System of Engagement(SoE)におけるIoTでは、現場定点カメラ情報をインターネット上に公開し安全・安心を訴求する企業が増えてきています。ブログやSNSで広報していくことやISO認証に加えて、実態をさらけ出すことも企業の信用・信頼になってきました。政府・自治体も、オープン・データ活用を少しずつ進められています。
そうはいってもすべてを開示することは、なかなか難しいですが、財務諸表における勘定科目だけでは、現状、未来の戦略・方向性を示しきれない。「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領」では求められてはないものの、1990年代よりロバート・S・キャプラン氏とデビット・P・ノートン氏によって考えられたフレームワーク、バランスト・スコアカード、戦略マップ(学習と成長、業務プロセス、顧客、財務の4つに着目)は、内部統制において画期的でした。
時は流れて、前回までのSytem of Record(SoR)、System of Engagement(SoE)が注目されはじめ、オンプレミスからクラウド活用することで、中小企業でもSAPのような大掛かりなパッケージを導入することなく、各事業や部署における業務プロセス内のデータは連携可能となり、組織内外に対して目標数値を可視化し透明性を示しやすくなりました。
Sytem of Record(SoR)寄りのSystem of Insight(SoI)ですが、基本は、売上および営業利益、労働生産性(従業員一人当たり付加価値額)に焦点を当てる以下の2つの式でしょう。
ただ、これらの数値増減を劇的に変えていくためには、単にモノやサービスがマーケティング(顧客)として成功するだけでなく、リスキリング(学習と成長)して、以下に少ない人数で売上を実現するか、ムダな固定費を抑えてスリムでシンプルな業務プロセスを設計するかの中で、システム面からの改善や変革の実行を目指していくこと、すなわちデジタル・トランスフォーメーション(デジタイゼーション、デジタライゼーション)と思われます。
・売上= 販売単価 × 数量
=(営業利益+変動費+固定費)×(個数×件数)
=(営業利益+販管費+売上原価)×(個数×件数)
・付加価値額 = 営業利益+給与総額+福利厚生費+支払利息+動産・不動産賃借料+租税公課
※労働分配率=給与総額÷付加価値額 …付加価値額に占める給与の割合
さらに、小売業、製造業では在庫(棚卸資産)や製造原価があり複雑になりまして、勘定科目は大きく増えます。
<小売業>
売上= 販売単価 × 数量
=(営業利益+変動費+固定費)×(個数×件数)
=(営業利益+販管費+売上原価)×(個数×件数)
=(営業利益+販管費+期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高)×(個数×件数)
・期末商品棚卸高=在庫:棚卸資産(B/S)
※「棚卸減耗損」「商品評価損」なしと仮定
※棚卸資産(B/S)が増えると営業利益を錯覚しやすい
※棚卸資産(B/S) は、別途管理費用等が生じやすい
<製造業>
売上 =(営業利益+販管費+期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高)×(個数×件数)
・期末商品棚卸高=在庫:棚卸資産(B/S)
・当期製品製造原価=期首仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末仕掛品棚卸高
・当期総製造費用={期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高}+労務費+経費
=直接材料費+直接労務費+直接経費+間接材料費+間接労務費+間接経費
勘定科目が増えれば、集計するだけでも大変であり、業務プロセスはあいまいで属人化したエクセルに頼っていれば歪んだSytem of Record(SoR)となり、ともすると見誤ったSystem of Insight(SoI):戦略意思決定を招きやすくなります。
次回は、System of Insight(SoI)における、期末商品棚卸高=在庫:棚卸資産(B/S)に触れます。